読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うんちは何を語る?

第二の脳といわれる腸と人の体のかかわりについて、興味本位に書きつづります。

大腸がんと食物繊維はリンクする?

大腸がんのイメージイラスト

 

大腸がんは、大腸の内側に発生するがんの総称で、生じた部位によって、結腸がんや直腸がんなどとも呼ばれます。

近年では、日本で大腸がんが急速に増加していて、がんによる死亡者数部位別の統計では、男性では肺、胃に次いで第3位女性では肺、胃を上回り第1位となっています。

食物繊維が足りない? 

近年、日本人に大腸がん患者が増加している一因として、高脂肪、低食物繊維型の食事・・・俗に言われる欧米型食生活が影響しているということは、報道などで耳にする機会が多いと思います。

 

事実、脂肪の多い食品を摂取すると、腸内では胆汁酸や腸内細菌が作用を及ぼすことで発がん性物質がつくられます。

もちろん、発がん性物質が生成されたからといってスグにがんを発症することはありませんが、この発がん性物質が大腸の粘膜と長期にわたって接触すると、がん発生リスクが高くなると考えられています。

 

そして、腸内の有害物質を排出するために有効だと考えられているのが食物繊維です。

 

食物繊維とは、専門的な言い方をすると「ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体」のことです。

タンパク質や糖質といった栄養成分は、摂取すると体内で消化酵素によって消化され、小腸で吸収されますが、食物繊維は消化されずに大腸まで到達し、うんちとなって排出されてしまいます。

つまり、食物繊維はエネルギー源としては、あまり役に立たないんです。

でも、いま仮に街頭で「食物繊維のイメージは何ですか」と尋ねれば、「体にいいもの」「健康のために必要なもの」「お腹の調子を整えるもの」といった答えがたくさん返ってくることは想像に難くありません。

 

実は、20~30年くらい前まで、栄養学的な食物繊維に対する評価は、「取るに足らぬ成分」で、食物繊維自体に栄養的価値はないとされていたそうです。

食べてもエネルギーにもならずに排出されるだけだし、それどころか、小腸で吸収される他の栄養分の利用を妨げる、とまで言われていたというから驚きです。

そんな食物繊維が世界的に注目されるようになったのは、1972年に英国の研究者が「食物繊維は大腸がんの予防に大きな影響を与えている」と報告したことが発端でした。

さらに、その頃の日本人の食生活は、欧米人に比べて食物繊維の摂取量が多いことも分かったんですね。

その上、当時は日本の大腸がんの発症数が欧米に比べてかなり少なかったことから、日本でも食物繊維への興味が高まったという流れがあったようです。

そして今では、食物繊維は体内の生理作用において重要な役割を担い、現代人の食生活には欠くことができない重要な栄養素であると認められるようになったんです。

 

食物繊維には種類がある

食物繊維には、セルロースなどの多糖類の不溶性食物繊維と、果物に含まれるペクチンなどの水溶性食物繊維があります。

不溶性食物繊維は、うんちの嵩を増して便秘を防ぐほか、大腸の働きを促します。

一方、水溶性食物繊維は、糖質や脂質の吸収を妨げて、食後の血糖値の急激な上昇を防いだり、悪玉コレステロールの吸収を抑制し、生活習慣病の予防に役立つともいわれています。

 

食物繊維たっぷりのお豆サラダ

 

水溶性食物繊維が多い食品として、野菜類・海藻類・きのこ類・果物・イモ類が挙げられます。

具体的には以下のような食品が該当し、特徴としては、アルギン酸・ペクチングルコマンナンなどを多く含みます。

  • 納豆・やまいも・春菊・アボカド・かき・もも・昆布・エシャロット・にんにく菊芋・ひじき・もずく・わかめ・あしたば・寒天・おくら・イチゴ・いちじく 他

一方、不溶性食物繊維を多く含む食品は、繊維質な野菜や穀類・豆類に多いです。

具体的には以下のような食品が該当します。

  • さつまいも・バナナ・ごぼう・大豆・玄米・アボカド・こんにゃく・そば・大麦・えんどう豆・ブロッコリー・たけのこ・とうもろこし・えのき茸・きくらげ・しいたけ・切干しだいこん 他

 

前述した通り、かつて食物繊維は、消化・吸収されずに食物カスとしてうんちになるだけだと考えられていました。

つまり、かつては食物繊維はすべてゼロカロリーだと考えられていたわけです。

しかし、その後の研究で、胃と小腸内では消化されないで大腸まで到達し、腸内細菌によって分解される=代謝されるものがあるということがわかってきました。

代謝されるということは、体内に吸収されるということなので、ゼロカロリーではありません。

なので、食物繊維の中にも1gあたり1~2kcalのものがあります。

たとえば、セルロースは腸内細菌のエサにならないのでカロリーゼロですが、果物に多いぺクチン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、小麦胚芽、難消化性デンプン、水溶性大豆食物繊維などは、腸内細菌によって容易に分解されるので、カロリーがあります。

食物繊維にも、ほとんど腸内細菌のエサにならないもの、よいエサになるもの、その中間のものなどがあり、腸内細菌のエサにならないものやエサにならなかった部分は、従来の説通りに、食物の残りカスとしてうんちの成分になります。

 

日本人の食物繊維の摂取量は?

それでは、日本人が大腸がんを予防するためには、どのくらい食物繊維が足りていないのか?という点ですが、実は日本人を対象とした疫学研究では、厚生労働省研究班による解析の結果、大腸がん発生リスクと食物繊維摂取量の間には、統計的な有意差はなかったんです!?

これはつまり、食物繊維の摂取量が多くても少なくても、大腸がんになる危険性は同じということです。

ただしこの結果については、そもそも対象者集団が食物繊維の摂取不足の人の割合が高かったこと、また摂取量の大小の幅が広くないことが、統計的な有意差が検出されなかった一因であると考えられています。

 

その後の研究では、食物繊維の摂取量が1日10g未満の場合は、食物繊維の摂取量が増えることで大腸がんのリスクは低下するが、10g以上では大腸がんの予防効果を認めないということが示されました。

これを言い換えると、食物繊維は不足していると大腸がんのリスクになるが、10gをクリアしていればそれ以上摂取しても、大腸がんのリスク低下に影響は認められないということです。

 

日本人の食物繊維摂取量推移を示すグラフ

 

上のグラフは日本人の食物繊維摂取量の推移を表したものです。

これを見ると、確かに半世紀前と近年では、摂取量が半減していることがわかります。

が、同時に、半減してもなお、10g以上は摂取していることもわかりますよね。

日本人の大腸がんリスクが上昇しているという厳然たる事実を認識しつつ、この統計結果を考慮するなら、大腸がん予防という観点だけなら、日本人がふつうの食生活を送っている限り、必要十分な食物繊維を摂れているということです。

 

ただし、独身者など外食比率が高い場合には、どうしても食物繊維が不足しがちなので、将来の大腸がんリスクを上げないためには、積極的に上記のような食材をバランスよく摂取することを心がける必要はあるでしょう。

ちなみに、WHO(世界保健機関)に所属する国際がん研究機関が組織した大規模疫学調査が調べた食物繊維の種別と大腸がんの関係についての調査結果では、果物や穀類から摂取する食物繊維は、野菜や豆類から摂取する食物繊維よりも、大腸がんを抑える働きが大きいということですので、もし大腸がんリスク低減のために食生活を改善する場合には、この点を意識してみるのもよいかもしれません。